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自然成長誘導法 ・バイオブロック

BIO BLOC

 歯列や咬み合わせ不正の原因の大半は、歯に原因があるのではなく骨格の不正成長によるものです。
歯科に関わる骨格は2個1対の上顎骨と下顎骨、そして顎関節窩のある2個1対の側頭骨の計5個の骨ですが、頭の骨は全部で23個もあります。
骨格成長の不正は歯科に関わる骨格のみに生じるわけではありませんので、歯科の領域以外にも機能障害の原因となっているかも知れません。
となれば、歯のみに執着する前に骨格成長を正しく改善していくことが理にかなっているのではないでしょうか。

 バイオブロック(BIO BLOC)というのは、開発者であるイギリスの Jhone Mew先生によって1995年に初めて日本に紹介された取り外し式の骨格矯正の装置の名称です。
 取り外し式の骨格矯正の装置は他にも種々あるのですが、他の装置と大きく異なる特徴は以下の通りです。
① 骨格拡大が横幅のみではなく前方方向にも行うことにより、顔面の前方への骨格成長を促す。
② 上顎に対する下顎の位置が生理的になるように骨格を成長させる。
③ 装置の力のみではなく、子ども自身の筋肉の力を利用することにより、骨格を正しく成長させる。
 
 顎が狭くて歯の並ぶスペースが無いお子様は、大半が常に唇が閉じておらず口呼吸です。
そこでバイオブロックの装置と様々な指導やトレーニングにより、それらを是正していくのが自然成長誘導法です。
骨格成長の改善の成果は何よりも、顔に表れます。

バイオブロックは治療の段階によりStage1からStage4までの4種類の取り外し式の装置からなります。

自然成長誘導法.gif
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正しい成長では顎は舌の大きさと連動して拡大成長し、顔は前方へと成長していきます。
しかし不正成長の場合は顎は舌の幅よりも狭くなっており、顔は後下方向へと成長します。
そのため、顔が長くなり歯茎の目立つガミースマイルになるのが特徴ですが、バイオブロックの装置とトレーニングによる誤った習癖の改善により、誤った骨格成長の方向を前方へと改善する事により整った顔立ちへと変化していきます。

 

自然成長誘導法 治療の目標

この治療の目標は単に歯をきれいに並べることではありません。

 歯列不正、不正咬合等をきっかけとして、その主たる原因である子供たちの発育環境の非生理的因子を御家族の方々と共に検証し改善していくことにより、歯科口腔領域のみに捉われない全身的、及び精神的に健やかな正しい小児の成長を支援し育成していくことを目標とします。   
 歯並びのみ装置の力で一方的に整える歯列矯正治療とは全く異なる概念と治療法であり、子供本人はもとよりご家族全員の意欲と努力がその成果を大きく左右します。

原因に対応した治療とは

歯科疾患の代表である虫歯や歯周病にしても“歯”自体にその原因があるわけではありません。
非生理的な食環境や生活習慣、様々な自己免疫を低下させる外的因子など何らかの理由が必ずあるわけです。

 原因を無視して行う治療に確実性や未来があると思われますか?
不正歯列や不正咬合なども例外ではありません。

 例えば不正歯列の代表で、俗に“出っ歯”と言われる 上顎前突症を例にとります。
 ほとんどの方は見た目から、上の前歯が過剰に前方に突き出していると認識され、”上の歯を後ろへ引っ込めなければならない”と、現象からその治療法の概略を想像されると思います。
しかしそれは誤りです。
上の歯と下の歯の位置関係だけ見れば確かにそうなのですが、実際には上顎前突症の多くはその名称とは反対に上顎骨及び周囲の顔面骨格の前方への成長不足により、扁平な顔面と歯牙との相対的な位置関係から、歯が突出しているように見えるのに過ぎません。
加えて下顎骨も前方への成長が不足していれば上顎歯の前突はさらに強調されて見えます。
 そこで原因から治療法を考えてみた場合、まだ成長過程であるのならば上顎歯を引っ込めるのではなくて、顔面の骨格を前方や側方へと成長させるのが妥当な治療法ということになります。

 このように歯列や咬合(噛み合わせ)の不正の大半は、それらを支える骨格の不正成長に第一の直接的原因があるので治療方法は原因によって決定されるべきなのです。 

 骨格の成長は何によってその質・量・方向が決まるのでしょうか。
答えは重力や筋力によってもたらされる 力=Force(圧力)です。
筋肉の具体例は唇を閉じる筋肉や、笑顔を作る筋肉、咀嚼に関わる筋肉等、顔全体を構成するほぼすべての筋肉です。
舌 (舌の95%は筋肉) も口蓋を拡大成長させる力となります。 
例えば口呼吸が習慣になると口唇は緩み、舌は口蓋から離れるため、骨格には生理的圧力が加わらず、上の歯牙を支えている上顎骨は前方や側方に成長することができません。
同様に下顎骨も坑重力筋が常に弛緩しているため後下方へしか成長できません。 

 さらに重要な事実として、下顎骨は単に咀嚼のためだけに存在しているわけではなく重垂(重り)として頭蓋に吊り下がっていることにより平衡の感知に三半規管と同等の役割があり、加えて頭位の傾きを復元するという重要な機能があります。(頭位軸慣性平衡系 K.Yoshida)
このことは極めて重要なことで、身体の平衡機能が失調している場合はそれを補正するために下顎骨が変位して成長の方向が歪められてしまいます。
そしてこれらの原因をさらに連綿と追究していくと、その多くは胎児期を含む成長過程での非正理的な生活環境や習慣に到達します。

 

 乗り物の普及や文化の変移による歩行の圧倒的な減少や、全身を駆使して遊ぶことがなくなったことにより、日常の生活のなかで身体の平衡機能を養生できなくなっている子供たちが増えています。
インスタント食品やファーストフード、など食文化の変化は咀嚼回数の減少の原因のひとつです。

 

単に歯科領域にとどまらない治療の効果  

 正しい成長が獲得されると頭蓋骨内部に生命活動維持に重要な脳などの頭蓋内臓器や頚椎、気道、副鼻腔などのスペースにゆとりが生じると共に、より整った魅力的な顔貌へと変化していきます。
目元が引き締まり上を向いた鼻の穴が下を向き、頬骨が出て彫りの深い凛々しい顔立ちになります。 
 顔は目、耳、鼻、口など機能の集合体であり、それらの形、大きさ、配置には意味があります。
整った顔貌は誰の目にも好印象を与えますが、これは種の保存の法則の一つかも知れません。 

 当院における治療実績では、副次的に鼻閉、中耳炎等の耳鼻咽喉科系の疾患の多くが短期に解消しています。
アデノイドや扁桃腺肥大の縮小も確認しています。
 鼻呼吸が習慣となると、免疫力が高まり感冒等の感染による疾患も激減するようです。
口呼吸による口腔乾燥環境が改善され、唾液で潤った口腔内では唾液中の様々な酵素や免疫系が最大限に生かされ、う蝕や歯周病にも抵抗性が増します。
さらに乾燥による歯石の沈着も減り、冬にはリップクリ-ムを欠かせなかったお子さんも唇がカサカサになりません。 (口呼吸だと梅雨時でも唇カサカサなのですぐわかります。)  

 窮屈に重なった歯列も骨格がきちんと成長すれば、余裕を持って自然と配列していきます。
そしてこれは、現時点ではまだ仮説の域を出ませんが、脳下垂体の機能が向上し、ホルモンの分泌、制御が正常化する可能性も考えられます。
脳下垂体の収まっているトルコ鞍の狭小化による脳脊髄液の循環障害や、鼻腔の狭小による鼻呼吸障害による副鼻腔の冷却不良は下垂体のホルモン分泌及び統括機構の不全を生じさせていると考えられます。 (顔の成長と脳の機能 1・2  当院院長論文)

 バイオブロック装置による上顎骨の拡大は成人になると難しいのですが、拡大スクリューをチタンのマイクロスクリューで直接上顎に固定して拡大する手法が近年 アメリカやドイツで開発され、成人にも適応が可能となりました。
アメリカUCLA大学での研究により、上顎骨の拡大治療により気道や鼻腔が形態的に拡大する事が科学的に証明され、さらに眼窩の骨形態にも影響があることが立証されました。
2017年からは、UCLA大学の呼吸器科ではCPAP(鼻マスクから圧をかけた空気を送り込むことで喉を広げて、無呼吸・低呼吸が起こることを抑止する装置)の適応となる重度な無呼吸症候群の患者を対象に、歯並びでは無く、無呼吸症候群の改善を目的としてこの拡大治療を行うプロジェクトが始まりました。
また、眼科でも外科的に行っているある種の眼窩の骨の形態修復をこの手法で行う研究が始まりました。

 

治療の適応年齢

 スタンダードな歯列矯正治療では、永久歯列の完成以降の年齢(およそ12才以降)から開始し、不正成長の骨格の範囲において歯を並べていきます。
抜歯により歯数を間引く事が今までは主流でしたが、様々なテクニックにより骨格の拡大による非抜歯治療に方向性が変わってきています。
しかし、完成した骨格を拡大する事は成長途中の未完成な骨格を拡大するのに比べて難易度が高まります。
歯牙の移動だけでは難しい重度のケースでは顎骨の外科手術を必要とする場合もあります。 

 自然成長誘導法は完成した形を変えるのではなく、正しい形に成長を導いていきたい訳ですから、成長過程で治療を開始します。
成果としては残された成長の割合が大きいほど有利なのは言うまでもありません。 
因みに頭蓋骨のサイズは3才で成人の70%、8才で約80%、13才では90%に達します。(Duance Grummon D.D.S.,M.S.D)  

 願わくば御両親が、妊娠以前から不正成長の原因を考慮された生理的な発育環境を構築されて、治療など必要が無い様にすることが理想ですが、何をすべきかを知ること自体が難しいところです。
私の研究と診療の主体もそこにありますが、まだまだ完璧なものではありません。皆様と共に考えていきたいと思います。  

 この治療をお受けになられたお子さんが、将来育てる立場になったときには自然とそういう生理的環境のなかに生活しているように期待したいものです。
しかし残念ながら問題が出てしまっている現実については、速やかに私たちの今までの研究で培った環境改善、養育法についてご両親が学んでいただき実行することから始めてください。  

その上で装置による治療開始は7~8才が適齢ですが、不正の状態によってはもっと早くから始めた方が良い場合もあります。(例えば受け口等)
9才10才は永久臼歯への交換期のため、装置の保持が不安定になります。 
さらに第2乳臼歯が脱落すると垂直方向への変位成長(顔貌の縦長化)を修正することが困難になります。又11才過ぎでも治療が出来る場合もありますが、目標のレベルは低くなります。
しかし16才を過ぎても良い効果の出ている実績もあります。  

又この治療により機能的な咬合関係や歯列は、骨格の成長と筋肉のバランスにより、連鎖的に改善されますが、一般的に良く目にする個々の歯にブレ-スをつけてワイヤ-で意図的に並べる歯列矯正治療と違い、不正の大小や治療の協力度によっては歯列に多少の隙間や不揃いが生じる場合があります。 
歯列不正が重度のケースや、治療開始年齢が遅い場合など、一部のケ-スでは自然成長誘導法と共に、前述のブレ-スとワイヤーを用いた歯列矯正治療のテクニックを併用する場合もあります。  

アメリカのウェストン・A・プライス博士が世界中の未開の地を23万キロに及び詳細な調査を行い1945年に出版した著書には、生活環境の近代的な変化が如何に人間の身体を退化、廃退させるかということが多くの現地人の写真と共に記されています。  

例えばニュージーランドの調査では、「未開の土着人であるマオリ族は世界中の種族の中でも最高の歯と身体をもっているといわれ、虫歯の罹患率はなんと1万本に1本であったが、白人が移住してくるにつれて近代化の進んだ地域ほど虫歯が蔓延し顔面骨も著しく未発達になり、歯列弓も狭小で、歯も叢生がみられ、鼻孔の発達も不十分であった。そして、移住してきた白人は、世界一ひどい歯をしている。」と記されています。 

私自身も、海外の途上国を何度も訪れて文明に過剰に染まらない生活をしている人々の素晴らしい身体と整った顔立ち、そして美しい歯列をこの目で見てきました。  
食生活はもとより歩く距離が桁違いに減少し、さらに例を挙げればキリの無いほどの生活の利便性を追及した環境変化が人類の身体を退化させる原因だと断言できます。 
蛇口をひねれば水が出て、電話を掛ければピザが配達されてきて、携帯電話が手放せない、等という事が当たり前となったのは、言語を習得してから400万年に及ぶ人類の進化の歴史のなかで如何ほどの年月を占めるのでしょうか。
獲得遺伝子の変化は通常100万年単位、最も早い期間でも20万年といわれています。我々の身体は気の遠くなるような時間をかけて環境適応し、現在に至っています。

子供の身体的不正成長をきっかけとして、文明の底無し沼に溺れる事無く、節操を持った生理的生活環境を将来ある子供たちのために構築していくことが、我々大人達が次の世代のために成さねばならない事だと私は考えます。

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お子様の来院にあたり・・・予めのおことわり。

キレ易い

ガマンが出来ない

人の話を聞かない

じっとしていられない

姿勢良く立つ・座ることが出来ない

  これらは子供の特徴とも言える事象ですが、集団環境に於いては子供といえども決して容認されるものではありません。 

一昔前までは家族だけではなく周囲の大人からもいさめられ、又他の子供たちとの共同生活により自然と協調性や人を思いやる気持ちを育んで大人へと成長してまいりました。

しかし、核家族化・少子化・豊かな生活の中でこれらが容認されてしまっている現状が、実は現代の子供たちの不正成長の増加と密接に関係があります。

 

  歯並び・かみ合わせの不正は、とりもなおさず骨格の不正によるものです。

そして、骨格の不正成長の大半は病的なものではなく、環境的要素に原因があります。

 

きちんと立つ・座る・歩く・食べることが出来ない子供の骨格成長は貧弱でバランスが悪くなります。

 

 日本の国字(漢字ではなく日本独自の字)に “躾”という文字があります。

 

精神のみならず“身をも美しく”という先人の想いが伝わる素晴らしい字だと思います。

子供たちへの躾はまさに不正成長の原因治療の基本となります。

 

  くまがい歯科では健やかな正しい成長を願い、子供たちには躾をしていきます。

必要があれば、時には“厳しい先生”をあえて演出いたします。

(脳生理学的には10才までは脳が未発達ですので、頭で理解させることには限界があります。 

学級崩壊などは子供をきちんと叱ることのできない親や先生が増えたことによる結果です。)

 

場所をわきまえる。

礼儀を尽くす。

姿勢を正す。

これらは将来の人格形成の基礎となります。

 

是非これを機会に医院の待合室を子供の躾の場として上手に活用してください。

 

 くまがい歯科では10才以下の子供は、待合室では子供用の桐の椅子に姿勢良く座るか、床に正座というのが原則です。

待合室は遊び場ではありません。

静かに本を読むなどするように躾けて下さい。

ソファーは大人用ですので使用は禁止します。 

食事はお子さまに限らずご遠慮ください。

 

又、備品等はお子様のいたずらを前提に設定してはおりませんので、高価な芸術品も無造作に置いてあります。

いたずらで備品を破損したり、ソファー等を汚損してしまった際には、不本意ではありますが保護者の方に御弁済をお願いすることになりますので十分な御配慮をお願いいたします。

 

くまがい歯科とご縁のあった子供たちが

礼儀・忍耐・分別と思いやりの心を備えた、輝く大人に成長されるように応援いたします。

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