摩耗により安定する歯並びとかみ合わせ
7~8才児の前歯は先端に3つの山があって凸凹しているけれど、数年で山が消えて平らになってきます。
これは上下の歯がかみ合ってこすれあう事により、すり減るからです。(咬耗=こうもう)
生えたての時は未成熟ですり減りやすい歯ですが、何年かの間に酸で溶ける→唾液のミネラルにより再生→溶ける→再生(脱灰と再石灰化)を繰り返して、だんだんとすり減りにくい緻密で硬いエナメル質へと成熟していきます。
摩耗はかみ合わせだけでなく、歯と歯の境目もおこります。(隣接面磨耗=りんせつめんまもう)
歯と骨との間には0.2㎜ほどのすき間があるので、わずかに動きます。
生えたばかりは丸っこくて幅広の歯ですが、よく噛んで食べている子は歯と歯の境目がこすれ合って平らになり、幅もスリムになっていきます。
点接触が面接触となる事で石橋のような構造となり歯並びも安定してきます。
又、スリムになった分のスペースは、奥の歯が順繰りに前へとつまってくるので12才臼歯や智歯(親知らず)の生える時期には後ろの場所に歯の生えるゆとりが出来てくるのです。
う~ん、人間の身体ってうまくできてるよね。
歯並び治療で、境目がすり減っていない幅広な歯をきれいに並べようとすると、歯列が長くなり窮屈になります。
おまけに点と点の接触となるので不安定で崩れやすくなります。
犬歯が尖ったままだと、肉食なら良いですが、アゴを横に動かしにくいため、穀物や野菜のように臼歯ですりつぶして噛むのには適しません。
生えたての時は尖っている歯もアゴの動きに従って咬耗し、より食べ物を噛みやすい形態へと変化していきます。
矯正治療では単に歯を並べておしまいではなく、そのような形態に修正していくことも必要だとくまがい歯科では考えています。
身体はもちろん、アゴや歯の形も先祖の生活スタイルや食事に適応して変化したものとなっています。 動物の歯を観察するとわかりやすいね。
自分の祖先とかけ離れた食事ばかりしていては身体がついていけません。 歯の適切な摩耗は、身体バランスと良く噛んで食べる食生活によります。
よく歩くことと、よく噛んで食べることは、とっても大切な事なのです。